Interview
竹田被服 通称:奥さん 大塚 富美子
ミシンの音があちこちから響く2階が仕事場である。一番端が定位置になっている。縫製作業の合間に顔をあげれば、従業員の様子が一目でわかるからだ。竹田被服の根幹をなす縫製技術について、現場を取り仕切る大塚富美子さんに聞いた。
(取材:若岡 拓也)
ミシンの音があちこちから響く2階が仕事場である。一番端が定位置になっている。縫製作業の合間に顔をあげれば、従業員の様子が一目でわかるからだ。
「裾を縫うときはこの道具がいいよ」「幅は5mmにしようと教えたり」
困っていたり、作業が滞っていると声をかけ、丁寧に教えていく。海外実習生にも手取り足取り実演する。言葉だけでは伝わりにくい細かい部分であっても理解しやすい。
「自分自身のできる作業量には限界があるし、年を取って昔ほど作業を進めることができません。今は長年やってきた技術をみんなに伝えていくことが、自分の仕事だと思っています」。
もとは看護師として勤めていたが、編み物や洋裁が好きで興味もあったので、ミシン針を手に取った。細やかな作業は性に合っていた。もともとはブラウスを中心に仕立てていたが、長年にわたり、多様な注文に応え続けて技術を培ってきた。縫製時技術の高さは今も健在。「強みは、なんでも縫えることです」と自負がある。
器用なだけではない。品質にもこだわりを見せる。「見た目にきれいで、着心地もよくないと、着てもらえません」。
大量生産の注文が重なっていても、やることは変わらない。納期を守るためにスピードが求められても、どんな注文でも品質を疎かにはしないという。
「普段から、いい仕事を心がけていないと、いいものが縫えなくなりますから」
入れ替わりのある海外実習生に仕事を教える難しさはあるが、やりがいを感じている。型紙や指示書から商品の情報を読み取って、自分で考えて正確なものを縫えるように育てあげる。
基本を教えて、あとは極力後ろから見守るスタイルを取っている。「彼女たちは5年しかいられません。その期間のうちに、全ての工程をできるようになってほしいからです」。自分で考えて技術を習得すれば、忘れることはない。
独り立ちしていれば、帰国してからも仕事を続けられる。そんな親心を胸に秘め、後ろから見守っているのだ。
製造拠点が海外になり、家庭で縫うこと自体が減った。だからこそ、縫製という文化を守ることにも力を注ぐ。手芸に興味があるという人に、空き時間を使って縫い方を教えている。
「自分だけの服などをつくる楽しみを紹介できる場所になっていけば」と地域の人にも、ものづくりの喜びを伝えていくつもりだ。